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キミの葬式には当然のようにボクは出席したが、以外にも泣かなかった。ボクの知り合いの参列者の数人からは
「お気の毒に。あなたたちあんなに仲が良かったのに。あの子の分もしっかりと生きるのよ。きっと、あの子も天国から応援しているわ」
というような慰めがボクに送られた。
宗教を信じているわけでもない人が天国だの何だの死後の世界があるなんてことは失笑ものだったが、慰めようとしている気持ちは理解することができたので、黒く染まった砂利を見つめながら「はい…」と気落ちしているような柄にもない低い声で応答した。
今日の朝までは大雨が降っていたが、キミの葬式が始まるまでには止んでいた。
それにしても仲が良かったというのは聞き捨てにならない。ボクとキミは確かに昔からよく遊ぶ仲だ。けれど全てを打ち明けられるほどのものではない。幼なじみと表現すると過剰表現となってしまうので、ちょっとした友達程度だ。
灰色の空を見上げると、昼間だからなのか夜の曇り空よりは鮮やかな色をしている。
「私が死ぬまでに世界は終わるかな…」
あの夜のキミが言った言葉を空に向けて復唱する。
なぜあのような言葉をキミが言ったのかはボクには理解できないし、意図もわからない。
でも、棺桶のなかで綺麗すぎたキミの白い肌を見て思ったことがあった。
キミは自らの死をあの夜の時点で予測していたのかもしれないと。
キミの死因は詳しく聞かされていなく、家族などのごく少数の関係者しかキミの死因を知るものはいない。
平気で人前で言えないこととなると、キミの死因は自殺だろうか。そのような噂は参列者の中から自然に耳に入ってくる。
キミがなぜ自殺を選んだのはどうでもいいことで、知りたいと思わない。
「ねぇ?」と聞きたくてもキミの精神はこの世界にもういない。空っぽの肉体だけが残っているだけ。
鼠色の空の隙間には群青が現れていた。
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