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忘れられない
キミが死んでから1ヶ月が経過した。
キミの死によって出たボクの生活の影響はまったくといっていいほどなかった。
キミの葬式が行われた次の日にはボクなりの健全な姿で学校に登校できたし、食欲や睡眠時間が変化するわけでもない。いたってボクは正常そのものだ。
でも、強いて言うなら1つだけボクには異常が感じ取れた。
こうして朝日を浴びて目を開けようとする一瞬間や、そして眠りにつくまでの数秒間さえも、ボクの頭はあることに支配される。
「私が死ぬまでに世界は終わるかな…」
キミが灰色の空の下で言った言葉がボクの頭の中で何度も何度もリピートされる。キミの葬式が行われた夜から、ずっと。
それは普段、生活しているなかでリピートされるわけではなく、つまり机に突っ伏して居眠りしてもリピートされない。リピートは決まって夜の寝る前と、朝の目を覚ますまでの一瞬。その中でボクに永遠にリピートされるのではないかと恐怖を抱かせるほどに幾度となくリピートされる。しかも相も変わらないキミの声で。
だが、このような些細なことでボクの生活をきたすようなことは、先程も述べたように、まったくない。なので、ボクはベッドからゆっくりと起き上がり、いつものように制服に着替えて、焼かれてない食パン片手にして外へと繋がる扉を、鉄のノブを回して開ける。
扉を閉めて、食パンを一口ずつ口に入れながら歩く。
今はまだ曇りがかっているが、きっと午後には晴れるだろう。昨日の天気予報で年配の人が言っていた。
ボクが住んでいる家の土地の中から、公共の道路に踏み出す。道路といっても、車には不向きで、最大で通れるのは中型車であると思われるほどの狭さだ。そのため、この時間の車の行き帰りはなく、その代わりに様々な校風を基調とした高校生や、肩がくたびれたスーツの出勤途中のサラリーマンが自転車で目前を走り抜ける姿が見られる。
そして、横をいないでほしいと願いながら見ると、やはりいた。
ボクに気づくと彼女はすぐにお辞儀をした。
「おはようございます」
そして、ボクに傘を差し出した。
「今日は雨が降るらしいですよ」
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