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……因みに、その友達というのは、僕の知っている奴ではない。
そいつは、僕の大好きな君の隣にいる癖に、君に較べて全く可愛くなかった。
スカートは君より短く、髪の毛は茶髪。化粧は濃い。対する君は、スカートは決して短いとは思わせない範囲での膝上。髪の毛は黒髪のポニーテール。化粧はすることによって、元々の可愛さが映えている。
君の隣にいて、恥ずかしくないんだろうか?どうして君はそいつと仲良くするのだろうか?全く訳が分からなかったが、とりあえず、君は誰にでも優しいし、もしかしたらそいつは内面が物凄く良い奴なのかもしれない。
ということで、僕の考えは落ち着いた。
そんなことを考えていたら、ソイツは、急に僕の方を向いた。僕は焦った。もしかしたらソイツは背後から向けられる妙な視線に感づいたのかもしれない。まずい…まずいまずいまずいまずい!
しかしソイツの反応は僕の悪い予想とは違った。が、事態は一気に急変した。
「ねぇっ!!散華(ちるか)!!後ろの方にいるあの人かっこよくないっ!?ほら!青と黒のナ○キのエナメル持った、170cmくらいのブレザーの学生だよっ!!」
それは自意識過剰とかではなく、間違いなく僕のことを指していた。
僕だって、自分がかっこいいなどとは、ひとかけらも思っていない。だけど、ソイツの指している青と黒のナ○キのエナメルバッグを肩に掛けた、170cmくらいの、ブレザーの男子学生は、その場に間違いなく僕しかいなかった。
ヤバい!そう思った時には、もう遅かった。
君は──…僕に気付いた。
僕の足が細かに震え始める。君は僕の方を凝視した。そして君は、僕が僕であることを知った。
僕は顔を下げた。
多分、僕の様子から僕が君をつけていたことも知ってしまったに違いない。僕は君が逃げるだろうということを知っていた。
僕は怖かった。君に今以上に嫌われてしまうことが。君と繋がることのできないことが。
尾行されたら、君は嫌がるということくらい、僕も理解していた。でも君を偶然見かけて、君をもっと見ていたい。繋がりが欲しい。と思った。
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