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すごく薄汚れた白い犬がいました。 ふわふわだった体は今、誰もが不快になるほどぼさぼさになっていました。 もちろん誰も触りません。 汚いからです。 もちろん誰も近付きません。 汚れているからです。 犬は、いつもひとりぼっちでした。 そんなある日、犬に近付いた人がいました。 その人は犬を見るなり微笑んで、わしゃわしゃと撫で回しました。 犬は嫌がりました。 その人が汚れてしまうからです。 しかしその人は、自分が汚れてしまうのも気にせず、犬をぎゅっと抱きしめました。 犬はなきました。 もちろん涙は出ません。 でも、犬はなきました。 「僕には君が必要だよ」。 その人はそう言って、犬を自分のものにしました。 犬はその一生を、その人のために懸命に生きました。 そして、死ぬときも一緒でした。 犬は、幸せでした。 とてもとても幸せでした。 生まれ変われたならば、もう一度その人と添い遂げたいと、強く願いました。
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