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私が初めて父親の存在を知ったのは、10歳の時で。
其れまでは、家は他所とは違う、でもそれを聞いたらお母さんが悲しむ、そう自分の中で封印してた。
母親と二人暮らしだけど、母の実家には祖父母も居たし、喩え父親が居なくても私には不満は無かった。
だって、初めから知らないんだから。
学校や近所で、浮気の子とか不倫の子って虐められた事も有ったけど、それよりも、私を産む事を選んでくれた、育ててくれた、お母さんが好きだった。
だから、悲しむ顔を見たく無くて。
私は、父親の事は心の片隅へ封印した。
そう、あの日迄は....。
「鈴ちゃん、お父さん欲しい?」
お母さんは、仕事から帰るなり私に尋ねた。
「どうしたの、お母さん....。
お母さんは、私と二人じゃ嫌なの?
私、お父さんなんて居なくても平気だよ、だってお母さんが好きだもん。
私、お父さんなんて要らないよ」
私は酷く狼狽し、焦り、得体の知れない恐怖に支配された。
お母さんに、捨てられるんじゃないか....。
そんな、曖昧で不確定な恐怖に。
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