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そんな私の心に気付いたのか、母は続けた。
「聞いて。鈴はお母さんの宝物だから....」
そう言って、私を抱き締め。
そして「鈴は、本当のお父さんに逢いたくない?」と、聞いて来た。
私は、益々混乱した。
自分で、母の悲しみを避ける為に封印した父親の存在を母から問い掛けられ、狼狽えた。
子供がどうして出来るのかなんて、学校で習わなくたって知ってる。
それに、お父さんに逢いたいかって言われたら、私だって逢いたいと思う。
いえ、逢いたいではなく、父親に疑問をぶつけたかっただけなのかも知れない。
父親が居なかった理由、家族に為らなかった理由、そして私自身を父親はどう思ってるのか。
でも、今まで暗黙に避けていた父親の話が何故急に出たのか....。
私には、理解出来なかった。
困惑する私を察したのか、お母さんは私から体を離すと、目を見つめ。
「ごめんね、突然お父さんなんて言われても、困るよね。
鈴は、お母さんが悲しまない様にずっと我慢してくれてたんだもんね、なのにお母さんが言い出したら鈴はどうして良いか迷うよね」
私は頷く事も出来ず黙ってお母さんの話を聞き、気付かない内に私の目からは涙が溢れ、止まらなかった。
お母さんは、私が父親と言う存在を心の中に封印してた事に気付いてた。
ただそれが、何故か嬉しかった。
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