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声を掛けて来たのは、同じ警備員の岩中悟(いわなか さとる)さんだった。
俺たち警備員は全員で四人。
岩中さんは、その中でも警備歴七年のベテランだ。
現在、六十八歳で勤めていた会社を定年退職をした後も何か社会の役に立ちたい、と思い始めたのが、この警備員の仕事だそうだ。
俺は、白い頭髪以外は、全く歳を感じさせないパワフルな岩中さんを尊敬している。
「こんばんは、岩中さん」
岩中さんは、俺の挨拶に応える様に二カッと白い歯を見せて笑った。
「信也くん、今晩はいつもより早いね」
「今日はお客さんが少なかったみたいで、道が空いていましたから」
そのことがずっと気になっていた。
今日は、十月二十日でポイント二倍デーだ。
毎月二十日は、そのため道が混んでいるのだが、今日は少し客が少なかった様な気がした。
「それは妙だね。今日は二十日なのに……」
岩中さんも俺と同じ事に気付いたらしく、眉を潜めた。
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