プロローグ 22:35

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その時、耳慣れた音楽が店内に流れ出した。 閉店時刻の五分前を知らせると同時に、俺たち警備員の勤務開始五分前を告げる音楽だ。 ショパンが作曲したという事は覚えているが、曲名は知らない。 「おっと、もうショパンがなり始めたか」 長年、警備している岩中さんでも曲名は知らない様だ。 「そうですね、行きましょうか」 俺は客が少なかったという謎の事は、すっかり忘れて警備室に向かった。 警備室は三階の化粧品店の横にある。 全部で五階建ての『ラック・モール』では、真ん中の三階に警備室を置くのが一番らしい。 俺と岩中さんは、エスカレーターを上りながら、先週から行われているプロ野球のクライマックスシリーズの話に花を咲かせた。 「確かに、昨日はどっちのピッチャーも良かったよね……あれ?」 岩中さんは途中で言葉を切った。 「どうしたんですか?」 「あれって、店長さんだよね?」 岩中さんのいう「あれ」とは、俺たちの少し先で、立ち話をしている二人の男だった。
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