第3章 花園

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鮮血に驚き、口から飛び出した問いに、ジャバーウオックは動じることなく、教えてくれた。       「生き物は、傷つくと血を出すだろう。花だって、生きてるから、出ても別に不思議じゃないよ」       易々と肯定され、流れているのが血だと理解すると、余計気味悪く思えた。       止める間もなく、花頭は、次から次へと、落ちてゆく。 土を埋め尽くすのは、弱者の顔。     あたしには、止めさせる勇気がなかった。 助けもせず、黙って見殺しにしたの。         先ほどまで、五月蝿かった花園は、徐々に、静寂が訪れる。   時折、断末魔の悲鳴の様な声や、炎が尽きる様な、か細い声が漏れて、あたしの耳にも届く。       土は、流れ落ちた血を吸いきれず、赤黒く、てらてらと濡れ、鈍く光る。       「みんな、死んでしまった、の?」     血をだらだらと流し、歯脈が辛うじて残るボロボロの葉や、折れて茎と葉だけ残る姿を見て呟いた。 あたしを囲む周りは、花の死体が覆う。       その時 「清々したわ。勝ったのは、私よ」   高々と勝利を宣言する女の声は、歓喜に酔いしれていた。         その場に立つのは、一輪だけ残る大輪の薔薇の花。   返り血を浴びたバラは、とても赤く、しっとりと濡れた花びらからは、血が滴り落ちる。      
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