序章  鏡の中の世界

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    どくん       あたしは驚き、顔を上げ、慌てて上体を起こし、身を縮めた。       威嚇をするようでいて。 それでいて、逃げだしたいような。   それはまるで、警戒を解かない猫のよう。           ピタリと閉められたドア。 勿論、誰もいるはずがない。   だって、家には、あたし以外、誰か居るわけないよ。 鍵だって、ちゃんと閉めてる。 居たら、おかしいもの。     そう自分に、言い聞かせた時。           またも、後方から。   「アリス」   もう一度、あたしの名前を呼ぶ声が、聞こえる。 聞いたことがあるようで、ない声は、家族の物ではないとだけ、断言できた。         え!?       いきなり呼ばれた事と、予想していなかっただけに、心臓が跳ね上がり、それと同時に、体もビクッと震える。      
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