第3章 花園

9/14
前へ
/226ページ
次へ
薔薇は、嬉しそうに、あたしに笑みを向ける。   堂々と、自信にありふれたそれは、曇りが一点もない程、晴れやかで。     彼女の頬を伝う血も拭わずに、茎を伸ばし、あたしに近寄ろうとしていた。       「アリス様。私を、貴女の特別な花にしてくださらない?貴女のお庭を、紅い紅薔薇で埋め尽くして差し上げたい」       薔薇の足元には、ひなげしの首と散った花びらが、ごろんと横たわっている。   生気の無い顔は、驚く程蒼白く。 無言の顔から、覗くのは、目を見開き、物言いだげな無念の顔。           どうして、仲間を傷つけて、平気で笑っていられるの?   傷付ける方だって、ただじゃ済まないのに。         「ごめんなさい。いくら花でも、殺した人と、一緒には…」   「私、殺していません。枯れていないでしょう」   「だって首が…血が…」         落ち着かせるように、ジャバーウオックは、後ろからあたしの肩にそっと、手を置く。 それでも、混乱して、感情が高ぶってきたあたしを驚かせるには充分だった。        
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3319人が本棚に入れています
本棚に追加