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薔薇は、嬉しそうに、あたしに笑みを向ける。
堂々と、自信にありふれたそれは、曇りが一点もない程、晴れやかで。
彼女の頬を伝う血も拭わずに、茎を伸ばし、あたしに近寄ろうとしていた。
「アリス様。私を、貴女の特別な花にしてくださらない?貴女のお庭を、紅い紅薔薇で埋め尽くして差し上げたい」
薔薇の足元には、ひなげしの首と散った花びらが、ごろんと横たわっている。
生気の無い顔は、驚く程蒼白く。
無言の顔から、覗くのは、目を見開き、物言いだげな無念の顔。
どうして、仲間を傷つけて、平気で笑っていられるの?
傷付ける方だって、ただじゃ済まないのに。
「ごめんなさい。いくら花でも、殺した人と、一緒には…」
「私、殺していません。枯れていないでしょう」
「だって首が…血が…」
落ち着かせるように、ジャバーウオックは、後ろからあたしの肩にそっと、手を置く。
それでも、混乱して、感情が高ぶってきたあたしを驚かせるには充分だった。
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