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「あたし外に出るけど、信じて待ってるからね」
それだけ伝えると、あたしは出口に向かって走り出す。
あたしが此処に居る事で、ジャバーウオックの行動を制限させてしまうのなら、一刻も早く出なきゃならないもの。
駆け出すあたしの背後から。
「待って、アリス様。私は、貴女の特別になりたいの」
そう叫ぶ薔薇の訴えを無視し、来た時と反対側にある扉を、ただ目指す。
…特別…
あたしは、小さな木の扉を開けながら、その言葉を呟いていた。
この世界の人は、口を揃えたかのように、アリスを特別だと言う。
何で?
そんな名前、いくらだってあるはずなのに、どうしてあたしなの?
バタンと、勢い良く閉まった扉の音で、我へと返る。
開けようとしても、先程はあんなに簡単に開いた扉は、固く閉ざされ、鍵を掛けたかのように、びくともしない。
壁は、蔦の他にも、棘が生えた茨が生えていたし、よじ登れる高さでもない。
それでも、しばらく扉を叩いたり、ジャバーウオックの名を呼んだりして待ってみたんだ。
しかし、扉の開く気配はなく、耳を澄ませても、花園からは何の音も聞こえてこない。
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