第4章 クイーン

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何時もとは違う景色を眺めながら、ゆっくり坂を歩いていくと、上に近づくにつれて、車のエンジンの音と思われる音が聞こえてくる。       誰かいるかもしれない。     期待を胸に、あたしは、急いで坂を駆け上がる。         何時もなら、坂の上にバスの営業所があり、通学に利用していたのに、今はバス一台も無く無人のまま。       だけどそこには、エンジンがかかったままの、一台の大きな紅いバイクだけが停まっていた。   そのバイクには、黒いジャケットとパンツを穿いた、紅く長い髪の、綺麗な女の人が跨っている。   艶やかな紅い髪と、気の強そうな黒い瞳が、この人の魅力。         「あの、」   初対面だし、普段なら絶対に自分から話し掛けたりしないけど、今は思い切って、話かけてみる。   ジャバーウォック以外に出会った人だもの。 逃したくはない。         「……」   勇気を出した一言にも関わらす、女の人は無言のまま。 ゆっくり顔を向けると、射抜くような瞳で、あたしを見る。     どうしようと思った時、女の人は口を開いた。      
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