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駅の構内は閑散としていた。
静かすぎてなんか怖い。
「誰もいないのかな?」
「誰もいないわけじゃない。もうすぐ発車するからだよ」
運行ダイヤを見ていたジャバーウオックは、他人事の様に答えた。
「え?」
「急がないといけないね」
次の電車は何時間も先にだから、これを逃したら無理だな。
本気で急ぐ気がないのかのような、のんびりとした口調だ。
「えっ!ええっ?」
「仕方ない。ここは少しだけ俺が動く」
そう言うと、失礼と言ってジャバーウオックは有栖を抱き上げる。
「きゃっ」
初めて、抱き上げられたことに驚き、有栖は小さな声をあげた。
「驚かせてごめん。でも、ちゃんと捕まっててくれる?」
言われるままに、有栖は、自分の腕をジャバーウオックの肩に恐る恐る回す。
さっき、赤っぽいと感じた瞳はちゃんと紫色だった。
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