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琴弥は六合と風音に事の次第をこと細かく説明して、邸の外で玄武の帰りを待った。
琴弥は今、赤い狩衣を纏って長い髪を後ろで一くくりにした格好をしている。
本来は男性用の狩衣だが、琴弥はこれをよく好んで着ていた。
「…………そろそろ帰ってくるかな…?」
「そう遠くはないからな。……帰ってきたぞ。」
六合がそう言うと、屋根から玄武が降りてきた。
「すまぬ、遅くなった。………それから、青龍からの伝言を預かってきた。」
「青龍から……?」
琴弥は何だろうかと首を傾げた。
「浩哉を彰の邸に送ってからすぐに来ると。」
「……うん、わかった。………それじゃ、貴船に……」
その時、邸の中から手と足を生やした桶の付喪神が、その手と足を器用に動かしながら出てきた。
「………っどうしたの?……これは、ばあ様にもらった…。」
付喪神が差し出してきたのは、昔、ばあ様が自分にくれた綺麗な瑪瑙の勾玉だった。
瑪瑙の勾玉は首にかけられるように、ばあ様がしてくれた。
「………っ!………そっか、ばあ様はいつも一緒にいてくれたんだ。………これは…ちゃんと持ってないと…。」
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