死人は笑う

2/9
前へ
/12ページ
次へ
 俺は、近くの竹薮に隠していた担架に 死人から奪った甲冑や刀を詰め込む作業を繰り返していた。 こういうことが趣味というわけではない。 もちろん、飯を喰うためにこうして戦に勝手に参加し、殺した人間の金になりそうな物を物色しているわけだ。 こういう戦には大抵いるのだが、逃げ出して人目につかぬ場所に身を隠す兵がいる。 そんな奴が俺の獲物。 怯える奴や、反撃してくる奴。 先日の斬った奴は、後者である。 4人斬ったがその半分の2人は怯え震え許しを請うばかりで刀を握りしめることもなかった。  俺は卑怯だ。 そう自分に言い聞かせ罪悪感が消えることはほぼない。 しかし、他人にそう言われると確実にそうだろう。 ろくに決まった職をもたない奴よりは生きることを考える。  数年前、俺がいた村では梅雨の時期に雨が降りすぎ結局収穫できた食料はごくわずか。 しかも年貢というものもあって、ほぼ半年間ほとんど口にするものも無い状態だった。 ほとんどの村の人間が流行病にかかるか餓死寸前の頃、俺は村を出た。 ちょうど行った先で小規模だが戦が終わり死体がごろごろ転がっていた。 近くにあった死体から刀をもぎ取りそれを売った。 かなりいい値段で売れ、久しぶりに雑草や虫以外の物にありつけた。 そこから俺は味をしめた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加