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彼が連れて行かれたのは警察署ではなく、国の機関の建物だった。やせぎすの気取った眼鏡をかけた、いかにもエリート然とした中年の役人が彼の前に現れ、静かにこう切り出した。
「あなたのご出身はF県の海沿いですね?」
青年は苦しげに頭を振りながら、自暴自棄になって怒鳴り返した。
「ああ、そうだよ!原発事故の警戒区域だった。なあ、教えてくれよ。なんで俺たちがこんな目に遭わなきゃいけねえんだよ!俺たちは被害者のはずだろ?」
役人は彼に取り合わず、背後に控えていた医師のチームに事務的に命じた。
「放射線障害の検査を」
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