カンビュセスの内定

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 俺も必死で平静を保とうとしたが、両手がブルブル震えるのを止められなかった。学長が話を終えると、大講義室の全てのドアから百人近い警官が室内に押し入り、俺たちを並ばせて首に細い金属の輪をはめ始めた。  外見はおしゃれなネックレスみたいに見えるが、一度はめると自分では絶対にはずせない、首輪だ。GPS発信装置が内蔵されていて日本中、いや世界中どこへ逃げようと位置を簡単に特定されてしまう。以前は手首につけるタイプだったそうだが、自分の腕を切り落として逃げた学生がいたため、首輪になったと聞いている。  講義室にいた五十人の学生は次々にその首輪をはめられて校舎のすぐ横に停まっている大型バスに押し込まれる。窓が全部金網で覆ってある警察車両だ。覚悟を決めたやつもいれば、見苦しく泣き叫ぶやつもいた。ある女子学生は首輪をはめられる順番が来ると小さな子供の様に泣き叫んだ。 「嫌よ!内定なんか要らない!家に帰してええええ!」
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