カンビュセスの内定

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 それから俺たち内定者は人里離れた内定者専用宿舎に車で運ばれ、それぞれ個室を与えられて入社までの日々をそこで過ごす事になった。個室にはテレビ、エアコン、中身満杯の冷蔵庫、そして最新型のゲーム機まで用意されていた。くそ、せめて最後の情けのつもりか?  翌日の朝、女子学生用の部屋の方からこの世の物とは思えない悲鳴が聞こえて来た。俺と数人の男子学生がさすがに驚いて駆け付けた。開いたドアの前の床に尻もちをついた格好でへたりこんだ女子学生が、両手で自分の目を覆って泣いている。  部屋の中をのぞいた俺は、すぐに何が起きたのか理解した。部屋の真ん中で別の女子学生の両足が宙に浮いて揺れていた。夜中に首を吊って自殺したわけだ。俺と一緒に駆け付けた男子学生が「チッ」と舌打ちして、納得いかないという口調でぼやいた。 「そうか、こいつ、孤児で身寄りがないって言ってたもんな。いいよなあ、自殺できるやつは」
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