カンビュセスの内定

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 一度就職の内定をもらった者は入社を拒否する事はできない。当初自殺する者が多く出たため、今では内定者が自分で命を絶った場合、三親等以内の親族全員が死刑に処される事になっている。  つまり俺がもし就職が嫌で自殺したりしたら、両親と高校生の妹が処刑される事になるわけだ。さすがに自分の家族の命を犠牲にしてまで内定から逃れようとする者はいなくなったと聞いている。  それから入社までの期間、俺たちは高いコンクリートの塀に囲まれ、その上には高圧電流が通った棘だらけの金網が乗っている、事実上の強制収容所で様々な訓練を受けた。スーツの着方、名刺交換のマナーなど、ビジネスマンになるための訓練だ。  座学では今の日本の企業社会の仕組みを改めて講義された。今日本の上場企業に入社するのは「国家労働力選抜制度」と呼ばれる仕組みで選ばれた大学生だ。もっとも国民は「カンビュセス・システム」と呼んでいるが。
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