カンビュセスの内定

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 そこで政府はある時期から国民全員に四年制大学までを義務教育とし、同時に四十歳定年制を導入した。そして大学四年生の中から無作為に選び、強制的に卒業生を上場大企業に就職させる事にした。  もちろんとんでもなく優秀な学生は別だ。そういう連中は公務員になって、多少の知的労働を課される代わりに普通の国民には夢でしかない豊かな生活が保障される。公務員を四十歳で定年退職すると民間企業に天下りして経営者や管理職になる。  中小企業や個人経営のビジネスは全部外国人に買収されているから、就職と言ったら上場大企業に行くしかない。だが公務員になれない大学卒業生はほぼ全員、生活保護の受給者になる事を選んだ。  だってそりゃそうだろう。なまじ働くより高い金額をもらえるんだし、七十歳になればその名前が生活保護から最低保障年金に変わるだけ。贅沢さえしなければ、憲法で保障されている、ええと何だっけ、そうそう「健康で文化的な最低限の生活」が黙っていてもタダでもらえるんだから。
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