友達でいること

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学校に着いて、いつものように準備を済まして、いつもの練習場所に行った。 投球練習って思ったけど、松谷がいないことを思い出し、今日はバッティングに専念することにした。 辺りを見回し、目的の人物を探した。 やつもバッティングを磨いてるようだ。 ……ちょうどいいや。 俺はやつに駆け寄った。 「大智。一緒に練習しようぜ」 「おう。もちろんいいぜ」 こいつもすっかり元気になった様子だ。 てか、こいつが体調不良って、そっちの方が珍しい。 俺が一人で物思いに耽っていると、大智が、あっ、そうだ、と何か思い出したようで 「松谷、休みなのか?」 と、言った。 「ああ、休みだ」 と、俺は言った。すると、残念そうな顔をし、 「ちょっと教えてほしいことがあったんだよな」 と、言って溜め息を漏らした。 「バッティングについてか?」 思ったことを言ってみた。 「ああ。この前も教えてもらったんだ」 この前……。 「そうなのか…」 知らなかった。 只々、感心するばかりだ。 ここ最近は俺とばかりで、バッティングをまともにできてないよな…… 異様に申し訳なさが込み上げてきた。 でも、嫌なら嫌って言うし、言わないってことは、良いってことだよな。 そう思うことにして、申し訳なさを忘れようとした。 けど、心の片隅にひっそりとその思いは残った。
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