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白い獣は息を僅かに荒げながらゆっくりと千秋に近付いて行った。
「ちあき~、終わった?」
白い獣の反対側の建物からひょこりと顔を出した愚か者が現れた。
恵理だった。
静寂の間が出来たから戦闘が終わったと思ったのだろう。いつも通りの、ゆっくりとした口調でそして明らかに場違いな声で千秋に話し掛けた。
「恵理!逃げろ!」
ライトニングがとっさに叫ぶ。だが、その頃には白い獣の巨大で出来た影は恵理に被さり、恐ろしい数の禍々しい牙は彼女を捕らえようとしていた。
「え?」
千秋は友の死が訪れようとする瞬間から目を背けた。自分があの時、恵理の親切を断っていれば、と後悔した。
次の瞬間、聞こえたのは白い獣の痛々しい叫び声と銃声だった。
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