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それからは夜の歪みの調査にも恵理が加わった。
千秋が授業中にうたた寝して聞いていなかった所は恵理が丁寧に教えてくれた。それは千秋にとって凄く有り難く、恵理の優しさが身に染みる事であった。
ある日の夜、三人はいつも通り歪みの探索をしていた。
「───いつもより感じられる力が大きい。千秋、注意しろ。」
ライトニングが何時になく千秋に注意を施した。こんな事は今まで無かった。だから千秋にはライトニングの注意がどれだけ危険性を表しているのか理解出来た。
「うん。」
唾を飲み込んで一度深呼吸をする。歪みの原因の「それ」は学校の中庭に居た。
「あれは…何…だ?」
身体中には無数の武器が刺さっており、多数の傷痕。荒んだ白い鱗は所々剥がれていた。四足の白い身体に、血走った様な赤い眼、片方折れた禍々しい角。ライトニングは「それ」を知らなかった、つまり別の世界の生き物である事だ。もう一つわかる事がある。「こいつは化け物だ」と言う事だ。
「ガアァァァァ!!」
白い獣は巨大な咆口を上げた。大気が揺れて千秋達の肌を振動させる。それと同時に千秋の中で恐怖と言う感情が駆け巡った。
「来るぞ!避けろ!」
ライトニングが千秋に向かって叫ぶ。ライトニングの声に少し遅れて千秋は全力で左側に跳んだ。
その直後、千秋とライトニングが居た場所が純白のブレスでなぎ払われた。
漂って来た微小のブレスの残害が千秋の肌に触れた。すると触れた箇所に強烈な痛みが走る。低温火傷だった。あと一瞬回避が遅れたらと思うと───ぞっとした。
「燃え盛れ!」
ライトニングの叫びと共に彼女の掌から炎の玉が放たれ、白い獣に着弾すると炎の玉は巨大な爆発を起こして白い獣を炎で包んだ。
「これでどうだ!?」
白い獣が包まれている炎の中にライトニングが間髪入れず幾つもの落雷を呼んだ。
「やったか!?」
次第に炎は消え、煙が晴れていく。そこには肌に数ヶ所軽い怪我を負った白い獣が平然と此方を捉えていた。
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