はじまりの音

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規則的に並べられたグラスー 文字がギリギリ読める位の照明ー どうも好きになれない香りー 私はそんな空間に存在する、カウンターの一席に座っていた。 ここは『Ray』という、地方の田舎にあるクラブ。 私は1年前、24歳になる年に、飛び込むようにしてここへ来た。 実力云々は置いておいて、出勤率が高い私は、少しずつ指名を取れるようになっていき、今ではナンバーワンになっていた。 「ヒナ、おはよ。」 私に声を掛けて来たこの人は、ここの店のチーママのレミさん。 「おはようございます。」 私はレミさんが、大好きで仕方がなかった。 素人だった私に、1つ1つ教えてくれて、時にはプライベートの相談にも乗ってもらっていた。 「今日、お客さんの予定ある?」 「無いんですよ…。」 「私も。二八はしょうがないよね。」 年末、この田舎では有り得ない位の混みを見せたこの店も、やっぱり2月にはガラガラだった。
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