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2024年
成房8歳、愛花7歳
まだ、この国に四季があった頃
幼き男女の二人は“エデン”と名付けられた家の前の庭で、じゃれ合い追いかけっこしていた
“ズタッ!”
大きな音を立て、少女の愛花が転んだ
「痛ぁーい!!」
わざとらしく大きな声で痛みを訴える
そんな愛花に、少し先を走っていた成房が慌てて振り返った
「愛花!?大丈夫か?」
走り寄り少女の目線に合わせしゃがみ込む
「うぅん…痛いよ…」
血の滲む膝を抱え、目に涙をいっぱい溜めながら、心配そうに見つめてくれる少年に甘えた声で訴えた。
「ほら!泣くなよ!ちょっと擦りむいただけだろ?」
「だって…痛いものは痛いもん…」
「分かったから…とりあえず早く傷口洗おうぜ!
バイ菌入ったら大変だからな?
ほら、立てるか?」
手を差し伸べると、愛花は嬉しそうに成房の手を握った
「うん!」
「あそこの水道で洗おうな!」
力強く手を引かれ、庭の隅にある水やり用の蛇口に二人は向かった
拙い手付きでホースを掴み蛇口を捻る
チョロチョロと流れ出たホースを傷口に当て、成房は元気付けるように声を掛けた
「沁みるかもしれないけど、泣くなよ?」
「うん…!」
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