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僕が目を覚ましたのはあれからどれくらい経った頃だろうか…。
気付くと僕はフカフカのベッドの上で寝ていた
霞みぼやけた視界の中に、心配そうに僕を覗き見る一人の少女がいた
「あっ!気が付いたみたい。
お父さん!成房!お兄ちゃんが起きたよ!!」
目の前の少女は部屋の外に向かって大きな声でそう叫んだ
そしてすぐまた僕を見下ろすと
「お腹空いてるでしょ?お粥あるから食べる?」
そう言って笑った
僕は久しぶりに誰かが笑う顔を見た気がした
夕食を作ると振り返った母の笑顔を思い出した
目の前で壮絶な死に方をした…あの前の母の姿を…。
涙が溢れた
止まらない
目の前の少女の笑顔が天国に住む天使のように見えたから…。
「お兄ちゃん…どこか痛いの?」
小首を傾げ、心配そうに覗く少女
その姿が子犬のようであまりに可愛く、少年は思わず見惚れた
「う、うぅん…」
「ならなんで泣くの?」
「な、なんでかな…お腹が空きすぎてるのかもね…」
「じゃあ食べて!ほら、今ならまだ熱いよ?」
スプーンに載ったお粥が美味しそうに湯気をたてている。
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