『満月の夜は』

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 私は休む事無く掘り続け、三時間かけて何とか5メートル弱の穴を掘り終えた。  もう腕はパンパンだ。しかし、休んでいる暇は無い。  穴を這い上がり、急いで車に戻るとトランクを開け、中を覗き込んだ。 「これは予定に無いヤツだ。アンタの所為で、今夜は散々だよ」  引き摺り出した男を担ぎ上げると、私は溜め息を吐きながらぼやく。  元はといえば、こいつが妙な事を言い出し、変な勘繰りを入れやがった所為だ。 「気を付けるのはアンタの方だったんだよ。特に“口”にな」  口は禍の門などというが、この男にとっては正にそうなった訳だ。その口も、もう開かれる事はない。  見上げた夜空には見事な満月が浮かび、まるで返り血を洗う様に、青い光がこの身に注いでいた。                  終  
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