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「いや違うよ。そんなんじゃない」
そう言ってから、窓外を眺めていた視線を、ゆっくりと車内へ戻す。
重たそうな瞼と一緒に持ち上げられた、淀んだ瞳がこちらに向けられると、ミラー越しに男と目が合った。
一瞬、その眼差しが私を哀れんでいるように見え、思わず「何です?」と尋ねてしまった。
すると男は小さく息を吐き、静かに口を開いた。
「……運転手さん、今夜は気を付けた方がいい。何だか不吉な予感がする。俺の勘は当たるんだ」
男の顔は真剣だ。だがその瞳は、何とも言えない曖昧さを内包していた。
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