‐出逢い・1‐

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卒業も近い1月の末のこであった…。 当時高校3年生だったわたしのクラスは、皆大学の進学が決まった為か、妙に安心感で満たされた緩やかな雰囲気で包まれていた…。 わたしの不良仲間達が大学の推薦を決め、楽しげにキャンパスライフの話で盛り上がっている。 仲間達が新たに始まる青春の返り咲きを楽しみにしているというのに、今わたしの青春は幕を閉じようとしてる…。 大学に行けないのは高校入学の時から分かっていたはず…。 第一次志望公立高校の入試をすべり、〈お金がないから私立は絶対駄目だ。働くか、職業訓練校かどちらかにしろ〉と父からの厳しい通達…。 ウチの厳しい経済的事情を十分承知していたわたしは〈学費、小遣い、被服費全てをバイト等で何とかするから〉と無理矢理父に頼み説得、やっと二次試験で私立義塾高校に入学出来たのだ。 周りで同級生や仲間の進路が決まる度に、一人取り残されていく疎外感がわたしを苦しめる。 自分の中で渦巻く寂しさを隠せなず、苛立つわたしは皆から顔を背け小さく舌打ちする。 ‐素直に仲間達を祝福することすら出来ないわたしは、なんて無力で情けない男なのだろう…‐
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