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お婆さんは手を止め話し出した
婆「このお墓は初恋の人のお墓なのよ」
式「初恋の方ですか……失礼な事かもしれませんが結婚は?」
婆「する予定だったかね……戦争がなかったらきっとね」
宮路「もしかして結婚直前に戦死なされたのですか?」
婆「いいえ、結婚所か付き合ってもいなかったよ」
三人は首を傾げた
婆「この人とはねあたしが食堂で働いている時に出会ったの」
お婆さんは昭和19年に食堂に働いていた。初恋の人はいつも閉店ギリギリにきて決まって玄米定食を頼んでいった
当時白米は貴重品で玄米でも高級品だった
婆「食べ終わった後のごちそうさま、その時の笑顔が素敵な人でね。ある雨降った日に雨が酷いのに傘もささずにきた日があってね。それで傘を貸したの。そしたら翌日昼に急いで返しにきたの」
宮路「律儀な方ですね」
婆「えぇ、その時初めてお話ししたの。聞いたらその人は特攻隊の方でいつでも死ねる訓練していると教えてくれたの。自分はいつ死ぬかわからない。だから生きているうちに返したいと言ってくれたの覚えてるよ」
神楽「……」
婆「それから夜来た時でも少しずつお話しするようになったね」
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