第一章

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中堅大学を卒業した菊池里華の夢は、幼い頃からキャリアウーマンになる事だった。 大学を卒業し、本意ではないが、それなりの規模の会社に営業として勤め出した彼女は、四年目を迎えていた。 里華は電機関係の会社に勤めていて、営業成績もそこそこだった。文系出身の彼女は電気について、制御について、良く勉強し、人付き合いが苦手にも関わらず、顧客の評判も良かった。 でも里華は違和感を抱えていた。 一生営業でやっていくのだろうか。意味の分からない理系の話にかこまれ、興味の無い電気の話に翻弄される毎日に嫌気がさしていたのだ。 それでも毎日、自分の努力が足りないと仕事に精を出していた。 FPがどうの。 決裁を取らなけば。 予算。 実績。 策定。 何だか、小学校時代の嫌いな子ばかりにかこまれる様な毎日。 それは里華にとって、知らず知らずのうちに、空洞のような孤独と、台風の前の様な不安感を増長させていたのだが、彼女はそれに気づく事はなかった。
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