女流剣士

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俺が二日前から滞在しているここ〈カサルブスタ〉の街を簡潔に表現すれば『猥雑』の一言に尽きる。 街の中央にある広場から四方に大きな街路が伸び、小さな店がひしめきあっている。道の両側には一風変わった料理をメインにしているレストランや外見は普通だが内部の構造が奇妙な宿屋。 香ばしい匂いで道行く人を寄せ付ける屋台や甲高い鎚音を響かせる鍛冶屋などが軒を連ねている。 広大な街の面積いっぱいに無数の隘路が重層的に張り巡らされていて一度入ったら抜け出すのは容易ではない。 今は昼前ということもあり石畳の街路には人が溢れている。レストランに入っていく者、店先で話し込む者や鍛冶屋で剣の強化を依頼する者とさまざまだ。 喧騒溢れる街の中央広場から南に伸びた道を人ごみを縫いながら歩く。道行く人達が俺のことをチラチラと見ている気がするがそれも仕方ないかと思う。 少し寝癖がついたままの黒髪。長めの前髪の下の柔弱そうな両目。細く通った鼻梁。女に間違われてしまいそうな線の細い顔。その下の体躯も細い。 着ている装備も目につく理由だろう。黒いシャツにズボン。同色のブーツ。そしてところどころ擦りきれてボロボロな黒のレザーコート。背中に吊られた黒い鞘に収められた片手用の両刃直剣。 いかにも貧乏で脆弱そうな少年。それが俺、リューマ・ガラハッド・ペンドラゴンにもたれる印象だ。 中央広場に向けて歩みを進める俺の前から背中にバスタードソードを背負った筋骨隆々の男が歩いてくる。 男は俺の姿を一瞥し口の端に嘲笑を浮かべる。脆弱そうな姿に簡素な装備。底辺ランクの剣士だろうと思っても不思議ではない。 だが『ランキング戦』は剣士自身の体格や装備だけで決まるものではない。
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