《 二 》

18/26
前へ
/121ページ
次へ
「他の皆さんもいいですか? 生きる為には今の環境を維持することが絶対条件という訳です。ならば、どうすれば今の環境を維持できるか? 最も簡単で有効な方法は……人間を減らす。つまり、殺すのが一番です。他国では既に、実践し始めている国も有りますよね。ですが、心優しき我が国の総理、御堂さんはその方法は選ばなかった。と、言いたい所ですがそんな事をしても意味が無いんですよ。実際問題、今の状態を大半の人間は生きていけないわけですから。まずは、今を生きられるようにしなければならないんです。人間を減らしたところで、いきなり環境が改善されるわけではありませんからね。他国が行っている事は、その後にやるべき事なんです。他国はその事実に気付いていないのか、気付いていても手の打ちようが無いのかは分かりませんが。だからこそ、それが分かっているからこそ、御堂さんは薬を開発したわけです。しかし、薬を飲んでも前述の通り、今の状態を維持しなければならないと言うことに変わりはありません。そこで私の案が出てくるわけです」 藤川は興奮しているわけではない。 が、口調は少しずつ熱を帯び、何処か悦に浸っている。 そして、眼の奥に狂気的な冷たい光が宿るのを御堂は見逃さなかった。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加