《 二 》

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御堂は逡巡し、黙りこくる。 「総理! 何とか言って下さい」 「分かった。いや、分かりました。畑山……さん」 畑山は御堂より年上だが、総理である御堂に付き従い、敬意を表する意味で常に敬語を使い、逆に御堂には自分を部下として扱い、敬称も一切、必要ないと言っていた。 そして、これまでずっとそうしてきた。 その関係性こそが、言わば二人の絆でもあった。 しかし、今、御堂は畑山に敬語を使う。 つまり、それは二人の絆を断ち切った事を意味する。 「畑山さん。あなたが私を信じてくれているのはとても有り難いし、嬉しい……あなたの信頼、気持ちを裏切るのは、大変に心苦しい……しかし、藤川君の案こそが、私の考えなんです。すみません」
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