《 二 》

25/26
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
言葉自体は乱暴なのに、感情の篭もらぬ、平坦な事務的口調で話す様は、怒鳴りつけるより遙かに不気味で冷酷な恐怖を福嶋に与える。 しかし、藤川にしてみれば、福嶋に恐怖を与えるつもりなど無い。 ただただ、御堂以外のこの場にいる人間達に興味が無くなっただけだった。 御堂もまた、ここでこれ以上の説得を試みても不毛であると悟った。 自分自身、悩んだあげくに出した答えだったのだから、この場ですぐに回答を得ようというのはさすがに無理だと判断した。 「私の考える案をもう一度、言います。私の開発した薬を使う。薬は他国へは渡さない。その後、人々が、人為的、自然的を問わず、淘汰されていくのを待つ。これに賛同する者は、一週間後、官邸に来て下さい」 御堂は達観し、静かにその場を後にした。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!