《 三 》

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女もまた気付いた。 自分以外に異形がいない……。 薬の存在が公表されたのは一年前、大々的に公表されたのはその一回だけだった。 薬の公表と説明をしたのは背中から生えた無数の腕が羽根の様に見える元総理の御堂、その傍らには阿修羅の様に腕を六本生やした藤川。 御堂と藤川は薬の効果と副作用、有用性と必然性、それだけを訴えた。 それを最後に二人は姿を消した。 薬の公表後、新総理となった畑山が御堂と藤川の本当の狙い――他国の人間、薬を飲まない者は淘汰しようとしている事――を告げた。 畑山は御堂と藤川の姿を異形と表現し、薬と二人の考えを激しく非難した。
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