54人が本棚に入れています
本棚に追加
「御堂さん、そろそろいいんじゃないですか? こっちの準備も整っています。未だ、相当激しく抵抗しているようですが」
藤川が御堂の耳元で囁く。
その顔には普段の冷然とした表情からは想像できないような、満面の笑みが浮かんでいる。
だが、それは楽しさ、嬉しさ、喜びなどを表す人間らしい温かみのある笑顔ではない。
見た者を恐怖させ、ゾッとするほど冷たく、不気味で歪な笑顔だ。
その笑顔を見て御堂は思った。
藤川にしてみれば確かに楽しくもあり、嬉しくもあり、喜びであるのかもしれない。
しかし、これから行われることを考えれば、そんな感情を抱く事自体が異常であり、イカレている……。
それを実行に移そうとしている自分もまた、イカレているのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!