《 三 》

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「御堂さん、そろそろいいんじゃないですか? こっちの準備も整っています。未だ、相当激しく抵抗しているようですが」 藤川が御堂の耳元で囁く。 その顔には普段の冷然とした表情からは想像できないような、満面の笑みが浮かんでいる。 だが、それは楽しさ、嬉しさ、喜びなどを表す人間らしい温かみのある笑顔ではない。 見た者を恐怖させ、ゾッとするほど冷たく、不気味で歪な笑顔だ。 その笑顔を見て御堂は思った。 藤川にしてみれば確かに楽しくもあり、嬉しくもあり、喜びであるのかもしれない。 しかし、これから行われることを考えれば、そんな感情を抱く事自体が異常であり、イカレている……。 それを実行に移そうとしている自分もまた、イカレているのだろう。
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