後一年で20歳

3/4
前へ
/16ページ
次へ
 そう、ワシはこの人間に飼われている猫だ。そして────── 「まずは…おかーさんただいまー」 チーン  仏壇に向かっているのが、現在の主(ぬし)であり、友でもある賢治(けんじ)19歳のオスだ。  ちなみに仏壇の前に置かれている写真に写る人物が、ワシの元主の賢治の母親だ。賢治の母君には本当に色々良くしていた───── 「よし、ちょっと遅くなったけど、昼ご飯にしよ。タマには刺身買ってきたからねーwwおいでww」  …………。ふぅ、仕方無い。母君の思い出話はまた今度にして、賢治について行ってやるか。刺身を無駄しても罰当たりだからな。 「にゃーぁ(来てやったぞ)」  台所に居た賢治の足下にすり寄る。 「待て待てwwまだあわてる時間じゃないww」  べ、別に慌ててなどいない!!踏まれないように居ることをアピールしているだけだ!!──と声を上げて反論するが、賢治からすると 「わかったわかったwwほら、とりあえず一切れだけなww(ヒョイ」 おねだりをしているように聞こえるだけだった。人間の言葉は理解できるというのに…、喋れないというのは、もどかしくてやるせない。  だがそれも…、後一年…後一年だ。そうすればワシも… 猫又になれる。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加