後一年で20歳

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 あれは確か4年前だったな。深夜に開かれた仲間内での集会で聞いた話だった。 ・ ・ ・ ・ ・ -4年前:猫の集会- 「おぅ、ワシらも随分と年を重ねたのぅ」  そう遠い目で話すのは古くから近所の高橋さんに飼われている友達、人間につけてもらった名は『チョコ』だ。 「そうだな…。ワシらもあと何年持つか…」 「そういえばタマは聞いたか?隣町の猫の話」 「ん?特には…、何か話題になるようなことがあったのか?」 「実はな…」  チョコは勿体ぶるように間を空け、ワシの顔を見ながら切り出した。 「隣町に住んでいる猫に、猫又になった奴が居るらしい」 「猫又?」 「猫又というのはだな。齢20年を越えると尻尾が二つに分かれるらしい」  怪我した話? 「そうなると、人語を話せるようになり、年老いて死ぬこともないらしいんじゃ」  なにそれ凄い。 「それは誰でもなれるのか?」 「20歳を迎えられたらのぅ」  そうか…、もしワシも猫又になれれば 賢治とずっと一緒に…母君との約束も守れる…。よし。 「チョコ」 「んあ?」  ワシは決意を固め、呑気に顔を洗っていたチョコへ向け真剣に宣言した。 「ワシは猫又を目指す。事故にあわぬよう集会への出席も控えることにする」 「そうか…やはりのぅ、タマはご主人の事が好きじゃもんなぁ」 「それはチョコも同じだろう?」 「まぁな…よし、ワシも一丁目指してみるかのぅ」 「あぁ、お互い頑張ろう」 ・ ・ ・ ・ ・  懐かしい思い出だ。チョコは志半ばで病気に倒れた。最期に一目会おうとチョコの所へ行ったときに見た物は、嘆き悲しむチョコのご主人の姿だった。  ワシが死ぬ時、賢治があの様に悲しむとしたら、ワシは死んでも死にきれん。そう思い、あの日からワシはネズミを食うのを止めて、健康のためと賢治が買ってくれるカリカリを主に食べてきた。  健康診断や、注射も嫌がらず頑張った。そんな努力の結果、ワシも今年で19歳。あと一年、あと一年でワシと賢治の努力も報われる。 「ん?もう刺身食わないの?じゃあ、残りは俺がww」 「フシャー(食う!)」 ブンッ  あぶない、あぶない。考え事してたら刺身をそっちのけにしてしまった。 「猫パンチww動き止めてたのにww急にwwwwはい、刺身あっげーるww」 「ンニャフナフ(刺身ウマウマ)」 「はぁー…急にぼーっとするから調子が悪くなったのかと思ったよ。ふぅ…」  何はともあれ頑張ろう。    
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