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「6」
「え?」
「6、だ。……っち、苦い」
肌寒くなってきたこの季節に、温かい珈琲は本当によく染みる。
ところで、ブラックコーヒーを口にして舌打ちをする人間は、本当に無糖派なのでしょうか?
まあ、今はそんなことはどうでもよく
「6、ですか?」
「ああ。6だ」
どうやら文字通りセールストークが始まったらしい。給料日を明日に控えた僕の財布は薄く頼りない。来店した僕が悪いのだが、博士の聞き取り易く透明感のある声と、回りくどい話し方には抵抗し難い魅力があるのだ。
「一昨日、売りにきた客の話だ。貴様の財布の中身等、知っている。安い話さ」
「はぁ……、6。がですか」
博士とは古い付き合いだ。かれこれ、5年になるだろうか? そろそろ僕も嫁を貰うべき歳なのだろうが、この店を見つけてからと言う物、その日から貯金は貯まる気配がない。
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