消える

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特に幽霊が出るというポピュラーなものじゃない。ただ、山間の人家も稀な其所の雰囲気、トンネルという有りがちな設定。肝だめしの最低条件は満たしているんだろう。その日は、茹だる様に暑い、暑い日だった。蝉が煩い程鳴いていた。そんな日だ。彼の先輩から連絡が来た。肝だめしに行かないかと。何でも夏休みを利用し、免許を手早く取ったらしい。彼は二つ返事でその提案を了承した。特にすることもない。恐怖や深夜徘徊での補導の可能性より、其所に対する好奇心が上回ったそうだ。若気の至り、か。どうも理性より好奇心が勝る。それを言うなら私も、こんな仕事をしているくらいだ。まだまだ捨てたものじゃあない。
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