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「話、擦れてます」
指摘すると、解っていたのか、はたまた狙っていたのか、恐らく後者であろう博士はニヤリと笑う。
「すまないね」
そう言い、再び珈琲を口に運び終えると、再び語り出す。
その日の夜だ。彼、嗚呼、告げるまでもないだろうが補足すると、この話の売主さ。まあ、彼はその先輩と共に其所へ向かった。山に入ると、すれ違った対向車は片手の指で足りる程しか走ってなかったそうだ。勿論、信号も然程無い。そもそも、点滅していたらしい。そんな時間に稼働する意味もない、滅多に車等通らない。それだけでも、どれほど人気が少ないかは想像出来るだろう? 出発から、一時間半。車窓から眺める代わり映えのない景色に退屈し、心地よい振動も伴い、彼は半分微睡んでいたそうだ。が、漸く目的地に到着すると目が冴えたらしい。
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