消える

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博士が、何もない天井を見つめ、間を置く。何かを思い出してるかの様に。そして、不思議なものだ。そう聞こえるか聞こえないかの声量で呟いた。静かな店内、否、部屋にその声は妙に響き浮いた存在だった。 嗚呼、済まないね。どーにもこの話は歯切れが悪くなってしまう。何処まで話したかな? まあ、良いか。とにかく、肝心の肝だめしは何事もなく平凡に終わったそうだ。彼は言っていたよ。つい先日、仮免の試験に落ちた先輩の帰りの運転の方が、トンネルより恐かったとね。其処まで言って、売主の顔色は青くなっていったよ。新作のゲームソフトが欲しかったらしい。まあ、此処までなら缶ジュース一本分程の小銭を渡して、私もさっさと帰宅を促すのだろうがね。此処からだった。
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