序章 古い歴史は立たなければならない

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とあるお城の一室でぼんやりと遠くを眺めている老兵ルウシス・ルセフは使用人から頂いたコーヒーという飲み物を飲んでいる。どうして砂糖を入れてしまったのかといいたくなるような甘ったるい飲み物を、文句を言いながら口に流し込んでいく。 どうしてこんな何もないような一室でぼんやりとしているのかというと今日が特別な日であるからだ。しかし特別な日を話すとなればかれこれ10年は前の話になってしまうのでやめておこう。しかしいつまで待たされるのかと思うと少し憂鬱だ、誰か話し相手がいれば別だが、そんな人は一人もいないのである。 「ルウシス様、ご支度ができましたのでおいでください」 使用人が扉を開けて声をかけて来たのはかれこれ30分ぐらいたってからだ、やっとかとぼそりと呟きルウシスは重い腰を上げて立ち上がる。しかしいつの間に準備にこんなに時間がかかるようになってしまったのだろうか?昔はもっと適当に物事を済ませていたはずなのに… と思ったがあらかたほかの使用人に止められて強引に綺麗な服を着せられたのだろう、その場面が頭に思い浮かんできたので少し笑いそうになったが、年寄りが呼びに来た女の使用人の近くでニヤニヤしているとそれはそれは変に違いないのでこらえることにした。 「ではまいりましょうかルウシス様」 使用人は少しおびえながらルウシスの前を歩きながらしゃべる、そんなに顔が怖いのだろうかと時々自信を無くしてしまうときがあるのだが今年で60になったのでそんなことはもうどうでもいいものだ。 「晴れ姿を見られる日が来るとは思ってなかったよ…」 まるで独り言のように呟き使用人の後ろをついていく、今日は国が生まれ変わる日…それが彼女の念願だったのだ。いろいろと大変なことがあったのだが、今日のために頑張ってきたのだ、だから今日は笑っていると信じよう。いつものひねくれた笑いではなく、純粋に彼女が笑っていることを…
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