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「九鬼!九鬼っ!!」
赤羽は血相変えて九鬼の名を叫び呼ぶが、まるで反応が無い。
「おい、"右手首"の脈を見てみろ!」
赤羽はすかさず誰かにそう呼び掛けるが、大学生の三人は脈の見方がわからず、女性の皆は完全に怯えて腰を抜かしてしまっており、渋々大神が、赤羽の指示通り九鬼の右手首の脈を確認してみた。
「ダメだな…完全に止まってる」
しかし既に脈は無く、
「こちらもダメだ、外傷は見当たらないが首筋の脈も心音も聞こえない!」
赤羽が注意深く確認するが、特筆すべき箇所が見当たらない。
そこで赤羽は、
「皆、すぐにこの部屋を出ろ!」
「え…?」
すぐにそこにいた全員に、部屋から出るよう促した。
咄嗟の事で誰も反応が出来ずにいる中、
「そうだな。脈も無ければ心音も無いこの男はもう死んでる筈だが、目立った外傷が見当たらないところを見ると"毒物"の可能性がある…という事か」
大神はただ一人冷静に赤羽の考えを代弁し、すぐに部屋を後にする。
その時大神は、何か思う事があるのか、注意深く部屋中を見回していた。
他の皆もすぐに取り乱しながら部屋から飛び出し、最後に部屋を出た赤羽がすぐに鍵を閉める。
「皆、身体に異常は無いか?!」
そして赤羽は、すぐに皆の体調を確認するが、今の所は誰も異常は見られない様子だった。
それを確認すると赤羽は、
「この部屋は、念の為に九鬼の遺体を残したまま鍵を閉め、応援が来るまで現場を維持する。そしてこの部屋の一つしかない鍵は私が管理する」
冷静を装って皆にそう説明し、鍵を懐にしまった。
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