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[差出人]田畑護
[宛先]桐島秀
[本文]
シュウくん助けて
[END]
田畑護(たばたまもる)は小中学校の同級生で、
今は冴えない会社の冴えない営業マンだ。
元々、小学生の頃はクラスが同じになったことが一度あったのだが、お互いに関わりは全くと言って良いほど無かった。
しかし中一で再び同じクラスになると、ふとしたことから2人とも同じミステリー作家の大ファンだということが判明し、本の貸し借りに始まり何かとつるむようになった。
しかしどちらも内向的な性格で世の中的にはいわゆる『オタク』に属する存在だったからか、一般の健全な青少年に存在するような友情・努力・勝利といった類いのアツい間柄ではなく、もう少し冷めた、距離を置いた関係だったと秀は捉えていた。
とはいえ、
2人の極めて活動的ではない振る舞いは外から見るものにとって
『似た者同士』のイメージを植え付けるには十分だった。
しかしその実態は、
『何もやろうとしない』秀とは対照的に、
護は『何もできない』少年だった。
運動も勉強も恋愛も、
がんばろうとするけれどうまくいかないことだらけ。
そんな護から見ると秀の全ての物事に適切な距離を取ろうとするスタンスはとても『大人』に映り、実際護は何かと秀を頼りにしていた。
秀は小4の時に父親の仕事の都合で転校になり、
その後なんとなく面倒であまりしゃべらずに本を読んでばかりいるうちに気付いたらクラス内で『根暗オタク』のポジションを与えられていた。
しかし秀自身「確かに根暗なのは合ってる」と納得してしまい、むしろその冷遇を甘んじて受け入れていた。
一方、生まれながらの口下手で引っ込み思案な護からすると、
そんな秀は一風変わっていて、
その分頼りがいがあるように感じる存在だったのだ。
また面倒な話じゃないだろうか、と思いながらも返信する秀。
「ま、ちょうど仕事も終わったところだからな」
食わえタバコのままつぶやいた。
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