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さながら遠足の気分だ。
そういう意味合いで、案の定寝過ごした。
昨日はほぼ一日家でゴロゴロしていただけだというのに、よりによってこの大事な日の朝を寝過ごしてしまう怠惰な身体を心底恨めしく思う。
朝飯はコンビニで買えば良い。とにかくまずはヒゲだけ剃って顔を洗った。そして最近少し太腿がきつくなってきたカーキのチノパンに無理矢理足を突っ込み、上は何を着るべきか迷ったがとりあえずかしこまった体裁で襟付きのシャツにした。最後に、一昨日あたりから若干肌寒いことを鑑みて茶色のスプリングコートを羽織った。割としっかりとした恰好になっている。まるでこれから営業に行くようだ。
鏡に向かって髪の毛を手櫛で2、3回なでると右後頭部の寝癖が若干気になったが目をつぶることにした。時計の針はすでに12時を指していた。
神御黒小までは最寄り駅から急行で30分、さらにそこから徒歩かバスかという感じだった。案外近い。
コンビニで買ったカレーパンにかぶりつきながらホームで電車を待っていると、コートのポケットの中の振動を感じた。こんなときに電話だ。それも課長から。一瞬「バックれるか」と頭に浮かんだが、謹慎中の人間が「すみません、忙しくて電話取れませんでした」ではスジが通らない。とはいえ騒がしいところで電話を取るわけにもいかない。
仕方無くホーム近くの便所に入ると身を隠すように縮こまって通話ボタンを押す。
「はい……指宿です」
「もしもし、指宿くんかね。ん?周りが騒がしいが、ちゃんと大人しくしてるのか?」
相変わらずデカイ声だ。恫喝課長と呼ばれるだけのことはある。彼に中身は何もない。ただ声がデカイだけだ。
「いや……今は……食事に出ているところで……」
「ああ、それはそうだな。メシを食わなかったら死んじまうからな」
電話口でケタケタ笑っている。極めて腹立たしい。ていうか今すぐお前が死ね。
「電話したのはな、キミがこういう状態になってだな。おれも担当の再編成をしなきゃならんわけだよ。わかるか?第一な」
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