― 三ノ輪の章 SUN ―

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「去年から始まった冠番組も好調だし、この夏に始まったドラマには3人とも主役か準主役で出てるしさ。それにここだけの話、みなみちゃんに某有名報道番組からコメンテーターでのオファーがあるらしいよ。事務所は年齢がまだ若過ぎるってのを理由を断ってるみたいだけど、ありゃ時間の問題ね。それに確かオンエアは明日か明後日だったと思うんだけど、例の《男のコ・女のコ》の4半期の特番。私も出てるけどね。GALETTAが司会でやったのよね。こりゃあもう、そういうことよね」 「そういう例はいくつもあるわね」 「そうするとさ、来期は司会が2本、ゴールデンの冠番組が1本、ドラマ、CM、レギュラー番組は数え切れず。ふぅ、疑いの余地無き売れっ子だわ」 清々しく完敗、とばかりに綾乃が手を広げたポーズを取る。 「前にさ、3ヶ月だか4ヶ月だか前にみなみちゃんが突然レギュラーに穴空けたことがあったじゃない。確か、かなり近い親戚に不幸があったとかで。それで一時期すごく落ち込んじゃって、とてもじゃないけど仕事はできない、って。あの時は同じ事務所の先輩としてはヒヤヒヤしたよ。やっぱ芸能界って厳しいところだからさ、ちょっとの隙を狙ってすぐに新人が出てきてポジション奪われちゃうわけじゃない。でもその点、彼女たちは自力があったよね。すぐに持ち直して今はこうだもん。私も彼女たちが司会ならやりやすくていいわー」 「ふうん。あまり接点が無いからわかんないな」 「あれ?ゆめちんそうだっけ?」 「GALETTAの3人で挨拶以外の会話をしたことあるのなんて……あの、一番若いコ、仲川みなみか。彼女とだけだと思う。その時、綾乃もいただろ?」 しばらく小首を傾げる綾乃。ああ、と口を開けて手を叩く。 「そうそう。彼女が《となりのリストランテ》のレポーターに抜擢されて、それでうちらのとこに聞きに来たんだっけね。よく初代がうちらだってことを知ってたよね。あれって最初は微妙な時間帯だったじゃない。確か夕方。そんなマイナーな時期をよく知ってたなって思った」 「どうせマネージャーか事務所の誰かが吹き込んだんだろ」 「まぁそうかもしれないけどね」 結女が2杯目を空けると酒のまわりのせいか熱っぽく話だした。
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