First Mission, Escape

5/25
前へ
/25ページ
次へ
それがすごく心地いい……。 「あっ、そうだ。一樹は今日ずっと厨房にいる?」 「はい。その予定にございます。」 「じゃ、気が向いたら部屋に来てよ」 「承りました」 「お願いします」 そう言って笑顔を向け、談笑しながら食べて、 「ごちそうさまでした」 「仕事頑張ってくださいね」 「有り難う」 私は足取り軽く執務室に向かった。 「おはよう」 「おはようございます」 真っ白い部屋をアンティークとシャンデリアで彩った、 一番お気に入りの場所はどこかの皇室を思わせる作り。 だけど、その風景をぶち壊している物があるとするならば……、 それは間違いなく机の上で揺れるほど高く積まれた書類の 山だろう。 私は所定位置に置かれた椅子に座り今世紀最大のため息を ついた。 「本日も裸足ですか?」 本棚に背を預けて古めかしい本を片手に優雅に紅茶を 飲みながら私の足元をジロジロ見てくるあの男性は この屋敷で執事長を勤めてくれている瑞季さん。 ペタペタ歩いている音が耳につくのか、小さなため息を ついて本を閉じて本棚へ戻すと胸ポケットからハンカチを 取り出し半分に裂いた。 「うん」 椅子を回され彼の方に向くと躊躇いもなく膝をつき、 ご丁寧に足をハンカチで巻き始めた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加